さて、フランス人のストリート・アーティストJRを「ネクスト・バンクシー」として紹介している記事の第2回を進めよう。今回は、JRの人物像、作品の特徴、マーケット情報、展覧会歴、2020年の活動などに触れていく。
なお、第1回の記事は、下記リンクを参照してほしい。
■JRはどんな人物か
JRは1983年2月22日パリ生まれ、現在37歳。パリ郊外のモンフェルメイユで育った。本名はJean René(ジャン・ルネ)といい、アーティスト名のJRは本名の頭文字である。両親がクリニャンクールの蚤の市に屋台を出していたため、幼い頃から手伝いをしていたそうだ。
JRはサングラスと帽子を常に身につけている。そういう意味では、バンクシーと異なり、少しだけ“顔出し”している。活動拠点はパリ、ニューヨークが中心だ。
■JRの作品の特徴
JRの作品は、バンクシー同様、ストリート・アートである。ただ、JRは写真を使っていることが最大の特徴といえよう。
活動の初期から、JRはバンクシーにも近い強烈な社会批判、メッセージ性を作品に込めている。その頃の代表作は、《portrait of a generation》や《Face 2 Face》だ。なお、《portrait of a generation》については、〈第3回〉の記事で詳しく紹介する。
■JRのマーケットの取り扱い
取り扱いギャラリーは、ペロタン(Perrotin)。2020年8月現在、Perrotin Tokyoでの個展開催歴はない。日本でセカンダリーを取り扱っているギャラリーも見当たらない。
先述のとおり、プライマリーの作品はペロタンが取り扱っている。セカンダリー作品の取引は、サザビーズやフィリップスなど世界中のオークション会社が取り扱っており、すでに市場が形成されている。
2007年、フランスのオークションにてWomen Are Herosで撮影した写真の1枚が78,000ユーロで取引されたのがオークションレコードである。
■過去の展覧会ほか
2004年、パリのLa Loge Galleryにてアーティストのプリュンヌ・ヌリと展覧会「Toit et moi(屋根と私)」を開催。プリュンヌの制作した彫刻をパリのアパートの屋根に設置し、JRが写真に収めた。ちなみに、プリュンヌは後にJRのパートナーとなっている。
2013年と2015年には、東京のワタリウム美術館で個展を開催。現在は剥がれてしまっているが、ワタリウム美術館の壁に一般の人々の顔がペイントされていた。これは、JRが2013年の個展に合わせて制作した作品のようだ。
2016年には、ポンピドゥー・センターにて個展を開催。2017年には、アニエス・ヴァルダとの共同監督作品『顔たち、ところどころ』を公開した(日本公開は2018年)。
撮影スタジオ付きのバンに乗って各地を回るJRとヴァルダ、JRが村人とコミュニケーションを取りながら一緒に作品を作り上げていく制作風景が記録されている。なお、同作はカンヌ映画祭のルイユ・ドール(ドキュメンタリー賞)を受賞している。
2019年、ルーブル美術館のピラミッド建設30周年記念のインスタレーションを制作した。
■2020年の活動
2020年、コロナ対策の最前線で活動している医師や看護師、ケアワーカーのポートレートを撮影した。500枚のポートレートは、パリのオペラ・バスティーユの壁を覆いつくした。
なお、現在「Palais de Tokyo」という美術館の外壁に、JRの作品が展示されている。ワークショップ用の展示だと推測される。
また、上記のペロタンでは、「Tehachapi展」が開催中だ(9月26日まで)。こちらについては、別の記事でフランス在住のアーティスト・MKさんが紹介してくれるので、アップをお楽しみに。