「シンディ・シャーマン回顧展」フォンダシオン ルイ・ヴィトン(パリ)

  1. イベントレポート

フランス・パリのフォンダシオン ルイ・ヴィトンでは「シンディ・シャーマン回顧展」が9月23日より開催されている。また、この展示と併せて、フォンダシオン ルイ・ヴィトンが所蔵するコレクションの中から、シンディ・シャーマンとの対話を経て選ばれた作品を紹介する「Crossing Views(交差する視点)」も開催している(現在は新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて休館中。会期は2021年1月3日までの予定)。

ニューヨークを拠点とするシンディ・シャーマン(1954〜)は、1950、60年代の映画に登場するさまざまな女性像を自ら演じ、映画のスチール写真のように仕上げたモノクロの写真シリーズ「Untitled Film Stills」(1977)で世界的に注目されるようになった。

以降、映画、ファッション、絵画、または彼女の想像といったさまざまな世界観に存在する人物像を彼女自身の身体を使い表現するポートレイト作品を発表してきた。

シンディ・シャーマンのキャリア初期から現在までの約50年間の作品を網羅するこの回顧展では、170もの作品が一堂に会する。これらの作品は一貫して彼女自身がある役を演じるために、化粧やカツラ、衣装、舞台セットなどを用いて彼女自身のアイデンティティを書き換えることで、現実と虚構の境界を崩す。

興味深かったのは、彼女の幼少期の家族アルバムの彼女が写っている全ての写真に、「That’s me」と彼女の像の部分をマークしている作品である。彼女が10歳の時に制作を始めた作品であるが、この頃から自分自身と写真に写った自分について意識している点が窺える。

また「Crossing Views(交差する視点)」ではシンディ・シャーマンの個人コレクションも展示されている。これらは1970年代から彼女が収集を始めたもので、ある女装男性(スザンナ・ヴァレンティ)の個人的な写真である。自分とは別の人格を自分が演じるという欲望が、こういった形でシンディ・シャーマンによってコレクションされている点が面白い。

MK

フランス在住アーティスト。

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