■『パリを描く現代の印象派 ギィ・デサップ』
ギィ・デサップ 著
パブリック・ブレイン
3,500円(税別)
フランス・パリの情景を描いた画家は、過去にも現代にも多くいることだろう。今回、紹介するギィ・デサップもまた、パリを描く画家の一人だ。
デサップの描くパリの特徴は、いわゆるパリの象徴といえる「エッフェル塔」や「凱旋門」が、人々の日常に溶け合っていることにあると思う。街を歩く人々の息づかい、会話などがキャンバスから伝わってくるようだ。華やいだパリ、日常のパリ、郷愁のパリを感じられるのは、デサップがフランス人の画家だからこそだろう。
デサップは「現代の印象派」と評される。明と暗のコントラストが特徴的であり、その作品を観ただけで、彼の作品とわかることだろう。
さて、2020年6月に刊行された本書は、デサップの日本初画集だ。年間100点近くの作品が売れるという人気作家としては意外に思える。
この画集では、デサップのいわば「処女作」も収録されている。若きデサップの様々なチャレンジが垣間見え、ファンにとっては、また新たなデサップの発見となる。
巻末には、デサップの画業を振り返った「ストーリー」も収録されている。その中で、デサップは、自身が画家になれた理由をこう語っている。
絵を描く以外のことは何もしたくなかったし、実際にほかのことは何もしなかったからです。(中略)80歳を超えた今でも、毎日キャンバスに向かって絵を描いています。
22歳から画家の人生がスタートし、ヨーロッパを巡っては絵を描いて、それを売っていた。今でいう「ダーツの旅」で、ダーツが当たったのがニューヨーク。実際にかの地へ飛び、ある画廊のオーナーの目に留まり、そこから飛躍することになる。1964年、26歳のことだった。
最後に、現在、画家になろうと苦闘している若い人たちの教訓になりそうなデサップの言葉を挙げておこう。
世の中には画家よりも簡単にお金を稼げる職業がたくさんあるので、本当に絵が好きでなければ、画家は続けられない(中略)私は画家にしかなれなかったし、画家にしかなれない人が、画家になるのだろうと思います。