■世田谷美術館
東京都世田谷区砧公園1-2
新型コロナウイルス感染症に伴う緊急事態宣言が解除されたあとも、美術館などは試行錯誤を繰り返す日々を送っている。慎重な対応が求められるなか、企画展などを開き、鑑賞者を招かないといけない。
そんななか、世田谷美術館ではおもしろい試みをしている。企画展を延期・中止しないとならない状況を逆手に取ったといおうか。その名も「作品のない展示室」(7月4日〜8月27日。無料)。
作品を飾ることができないなか、かつて行われた企画展を思い出しながら、その空間を楽しんでもらおう。そういう狙いがある。また、世田谷美術館は砧公園内にあるので、周囲は緑にあふれている。開放的な窓から見える風景が、あたかも1枚の絵のよう。
世田谷は人口が多く、閑静な住宅街や繁華街が多いこともあって、芸術家が多数居住している。「気になる、こんどの収蔵品」展(8月16日まで延長。200円)は副題に「作品がつれてきた物語」とあるように、収蔵作品がどのような経緯で世田谷美術館に寄託などされているか、そういうエピソードも添えられている。青木繁、中川一政、向井潤吉など、世田谷にゆかりのある作家の作品が並ぶ。
美術館に入る前は、アルコール消毒はもちろん、マスク着用、検温、万が一のための連絡先記入が求められた。こういう体験をしてみると、普段通りの美術館にはほど遠い姿が窺えた。私たち鑑賞者側も、これまでの混み合った企画展といったイメージを捨て、ゆったりと鑑賞を楽しむ、いいチャンスと捉えればいいのではないかと思う。
アクセス:
東急田園都市線「用賀駅」より徒歩17分
小田急線「千歳船橋駅」より、田園調布駅行バス「美術館入口」下車、徒歩5分 ほか