■水面礼讃
裏参道ガーデン(2020年7月3日~7月10日)
2020年に東京藝術大学を卒業したばかりの若手アーティスト、渡邉渓(Kei Watanabe)、李光宗(Mitsumune Lee)の2名による合同展示が、7月3日〜10日に裏参道ガーデンで開催された。
キュレーターとして本展を手がけた孫嬌嬌(Kyokyo Sun)も2人と同世代である。注目の若手アーティストたちがコラボした本展の見どころをお届けする。
「水面礼讃」は、その名前からも想像できる通り、谷崎潤一郎の随筆「陰翳礼讃」から着想を得て企画された展覧会である。自然との共生というテーマのもと、流木の上に身近な動物や人を彫刻した渡邉の作品、自然風景と古代中国思想「気」の融合をテーマとして墨絵を描く李の作品が集められた。
3月に銀座蔦屋書店にて作品が展示されたのも記憶に新しい渡邉は、流木を利用した彫刻作品群《浮遊》をメインに展示した。水面を漂い、長い時を経て陸地へたどり着いた流木に、渡邉は旅のイメージを重ねている。
《浮遊》に続く新たな作品群である《常世》からも2点が展示されていた。《常世》では、旅の果てにたどり着いた世界が表現されている。神話や哲学のモチーフも感じられ、シンプルでありながら多くのことを語りかけてくる作品である。
もう一人のアーティスト李も、在学中から複数の展覧会や自由が丘の街を使ったアートプロジェクトに参加するなど話題の若手である。
李が描くのは空や海、滝といった自然の風景である。常に変化し続ける自然を描くことで、「気」の流れを具体化するかのような絵画作品である。
渡邉と李の作品を選び、企画を固めた孫のアイデアも面白い。
例えば、李の作品《空》の前には舟をモチーフにした渡邉の作品が展示され、渡邉が山をイメージしたという《常世-稜》の奥には海を描いた李の作品が並べられた。
異なったテーマの作品をあえて並べることで生まれる空間の緊張感とバランスが見事であった。
この展示に関わっているアーティスト3名は皆1991年生まれの若手であり、今後のさらなる活躍が期待される。
渡邉、李の作品は下記サイトにて購入が可能である。
翠波画廊(渡邉渓作品)
https://www.suiha.co.jp/artists/japanese-artists/kei_watanabe
KENZAN2020(李光宗作品)
https://konoyo.net/kenzan2020/e_artist.php?aid=714