アートの「価値」と「価格」の違い
AL:
下世話な話ですが、仮に予算が100万円だとします。すると、どういった作品が手に入りますか。
髙橋:
それくらいの予算があれば、いろいろ選択肢はあります。いつまでも残るものですから素直に自分が好きな作品、気に入った作品、手元に置いておきたい作品を購入することをお勧めします。
絵を購入されるときに、その絵の将来の価値を気にされる方がいらっしゃいます。しかし、アート作品にも流行があります。ご購入された作品が今以上に評価が高まり、高い値段で売り買いされるようになるかもしれませんが、また逆もあります。
それでも、自分が好きで買った、というのであれば納得できるのではないかと思います。
AL:
アートにおける「価値」と「価格」について、どのように考えていますか。
髙橋:
かつてこのようなことがありました。アンディ・ウォーホルは買い物が大好きだったそうです。ところが、買うだけ買って開封しないで寝室の屋根裏にしまい込んでいたといいます。とにかく買う行為が好き。そのため、ウォーホルが亡くなったとき、家には多くの遺品があふれかえっていました。
それらウォーホルの遺品がクリスティーズのオークションに出品されたのですが、大変話題になりました。ウォーホルが買っていて、ウォーホルの家から出てきたというだけで、ただのビスケットの空き缶に20万円程の値段がつきました。
では、現在、どのくらいの価格かといったら、5分の1もしないかもしれませんね。しかも、ウォーホルの家にあったという証拠がなければ、ただのゴミです。
流行によって「価値」ではなく、「価格」が上がるということが起きます。本物の価値が伴った価格なのか、その見極めには時間を要します。
AL:
最後に、アート作品を買いたい、コレクターになりたいという方にメッセージをお願いします。
髙橋:
アートの本質は、人間の深層にある本質的な感情に訴えかけてくるものを楽しむことです。アートは視覚芸術ですから、良い作品の条件の一つとして観ることの喜びがあります。
私はモネの作品が好きで、自分の好みに合ったモネの作品を前にすると複雑に織りなされた優しい色のハーモニーに心が癒され、いつまでも観ていたいです。他にも好きな作家はいますが、観ることによってポジティブな感情が刺激される作品は、優れた芸術だと思います。
このところ、アートを鑑賞するためには相応の知識が必要だとか、どんな画家の作品がこれから高くなるのかなどと、本来のアートの価値と異なったところで論じられ、アートが小難しいものになり苦手意識を持つ人が増えているように感じます。
しかし、本来のアートのあり方に立ち返って考えてみれば、観ているとワクワクして楽しい気持ちになることが、アート作品の価値基準の一番に来るものでなければなりません。
自分が気に入って手元に置いておきたい、と判断して購入した作品が、将来値上がりしたのなら、自身の目利きを誇ればいいでしょう。価値が出なくとも、自分にとってはお気に入りの作品なのだからと納得できるはずです。
AL:
本日は貴重なお話をありがとうございました。
翠波画廊
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