ストリート・アーティストJR「Tehachapi展」(ペロタン・パリ)

  1. イベントレポート

8月29日から、パリのコンテンポラリー・アートギャラリー・ペロタンでJR「Tehachapi展」が始まった(9月26日まで)。タイトルの『Tehachapi(テハチャピ)』とはアメリカ合衆国カリフォルニア州にある地名で、2019年にテハチャピ刑務所で今回の展示のメインプロジェクトが行われた。

このプロジェクトは、刑務所の屋外のバスケットボール場にアナモルフォーシス(対象をある一定の角度から見ると正常な形として見えるもの)の手法でコラージュされた作品である。JRはこの刑務所の囚人、囚人OB、刑務所で働く人といった48人の立場の異なる人々のポートレート撮影を一人ずつ行い、参加者は一人ずつビデオカメラの前で彼らの歴史を話した。撮影から2週間後、338本のロール紙にコラージュされた彼らの画像を囚人たちの協力のもと地面に貼り付けた。

このプロジェクトを行っていた際にJRのインスタグラムアカウントで公開されたストーリーズや、このプロジェクトの様子をまとめた映像も展示されている。

翌2020年にはこの刑務所を再訪し、刑務所の塀を内側から見て周囲の山の風景と同一化するような作品も制作した。

この他にも、2019年にルーブル美術館のナポレオン広場でのプロジェクトにまつわる作品も展示されている。こちらもアナモルフォーシスの手法が取られており、まるで広場の地面が掘り起こされ、巨大なガラスのピラミッドが地下まで続いているかのように見える。ギャラリーにはコレクションしやすく工夫された、これらのプロジェクトに関する写真作品が多く並ぶ。

JRの作品では巨大な画像を貼り付ける作業や対象に、アートの知識の有無を問わずボランティアなどの協力者が関わる。様々な立場の人間が一つのプロジェクトを行う中で生まれる干渉は、作品の一部であり、パフォーマンスでもある。

また、JRの躍進は即時性と拡散性、さらに「映え」を求めるSNSの発展と共にあると言える。分かりやすいインパクトと大衆性のある作風で人気を博すJRは、とても現代的である。

MK

フランス在住アーティスト。

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