毎年10月末にパリで開催されるFIAC(国際コンテンポラリー・アートフェア)は、世界中から約200ものギャラリーが参加し、世界3大アートフェアに数えられる大規模なアート見本市である。1974年から開催されていたが、今年は新型コロナウイルスの影響で中止となった。
FIACの中止に伴い、CPGA(アートギャラリー委員会)により「LE PARI(S)」と呼ばれるプロジェクトが立ち上げられた。このプロジェクトではパリの約200のギャラリーが参加し、FIACで展示予定だった国内または国外のギャラリーもこれらのギャラリー内に展示する形で参加した。10月19〜25日の約1週間、パリのあちらこちらで様々な作品が紹介された。
また、FIACの会場であったグラン・パレと出展予定だったギャラリー・ペロタンが「Wanted」というイベントを企画した。この企画はギャラリー・ペロタン所属の20人のアーティストの20作品がグラン・パレ内に隠され、来場者はこれらの作品を宝探しの要領で見つけられれば持ち帰ることができる、という破天荒なイベントである。この模様はインスタグラムの@wanted__gpアカウントで見ることができる。
例年パリではFIACの会期に合わせ、いくつか別のアートフェアも開催される。そのうちの一つで今回で5回目の開催となる「Galeristes」は、主にフランスの約40のギャラリーが参加し、通常通り開催された。
比較的購入しやすい値段の作品が多く見受けられるフェアであるが、来場者は例年より少ないとの声が参加ギャラリーから聞かれた。それでも会場は作品を売買する多くの人で賑わっていた。
今年で6回目の開催となる「Paris Internatinale」は元スーパーマーケットであった場所の内装を活かし、「スーパーサロン」というテーマのもと、主に若手アーティストの作品の展示を楽しむことができる。
新型コロナウイルスの影響を踏まえ、今年は出展した14ヵ国、26のギャラリーのギャラリストはパリに渡航せず作品のみ会場に送るという形に変え、さらに新たにweb上でも作品を売買できるシステムを組み込んだ。会場を例年の半分の広さに変え、出展料も通常の半額以下(昨年は4500€が最低出展料だったが、今年は1750€から出展可能)に設定を変えた。
参加ギャラリーは例年より3割減少した。主催者によると直接的な来場者はフランス、ベルギー、スイスからのコレクターが主だったとのことだが、web上での売買は中国やアメリカからの購入が目立ち、好評だったという。
最後に、今年で6回目の開催となる「Asia Now」は名前の通りアジア作家の作品にフォーカスしたアートフェアであるが、FIACに参加予定だったアルミン・レッシュ、ペロタン、テンプロンといった有名ギャラリーの受け皿となり、大きな盛り上がりを見せた。
これらのギャラリーが他のアートフェアではなく「Asia Now」を選んだ理由は、会場がパリの中でも富裕層が住むエリアにあることや、シャンパンバーなどのサービスが充実する豪華路線であるためだという。約40のギャラリーが参加した「Asia Now」では、FIACで展示予定だったサイズも価格も巨大な作品が展示された(Le journal des arts 553号参照)。